SEEX 09 新宿区立歴史博物館見学
こんにちは、イロタカです。7月の性を探求する場性を探究する場SEEX 08は、新宿区立歴史博物館見学を実施しました。
■新宿区立歴史博物館選定理由
「性を探求する場でなぜ新宿区立歴史博物館?」という声が聞こえてきたのですが、理由があります。
今年の2月に実施したSEEX 04 アクティブ・ミュージアム 女たちの戦争と平和資料館wam 見学にて特別展「日本人『慰安婦』の沈黙~国家に管理された性」を見てきたのですが、この展示では国が売春を管理していた公娼制度についての細かな調査結果が展示されていました。その中に、新宿の赤線・青線地帯の地図もあったのです。この赤線青線が引かれた新宿の地図を見て、新宿の歴史は性の歴史そのものだなぁと思いました。実際、こんな本も出版されています。新宿 「性なる街」の歴史地理 (朝日選書)
そこで新宿の歴史を取り上げている博物館を探したところ、見つけたのが新宿区立歴史博物館です。区立の歴史博物館なら、きっと性的な部分は省かれているに違いないと思っていたのですが、ムーランルージュ新宿座の展示があるということがわかったことで、少し何かそれっぽいものも出ているんじゃないかと期待もしていました。というのも私はこの時、フランスにあるムーラン・ルージュというキャバレーと、このムーランルージュ新宿座は同じようなものだと勘違いしていたのです。
ムーランルージュ新宿座が現在のAKBみたいな、会えるアイドルがいる大衆劇場のようなものだと気付いたのは、SEEX開催を決定した後のことでしたが、まぁどっちにしても何が展示されていて何が展示されていないかを確かめようということになりました。今「なつぞら」やってるし※。
※現在放送中の朝の連続テレビ小説「なつぞら」のこと。戦後の新宿を舞台にストリップ劇場やムーランルージュ新宿座の話も出てくる。

博物館入口。バブリーな香り。
■ボランティアガイドさん大活躍
SEEXを開催した日曜日は展示を解説するガイドさんがいることが分かっていたため、ガイドは最初からお願いするつもりでいました。当日ガイドについて尋ねると、聞きたいテーマがあれば対応してもらえることを知り、ダメ元で「性に関する新宿の話を中心に見てみたいです」とお願いしてみました。
当初は戸惑っていたボランティアガイドさん。「りっしんべんの性?」と聞かれ、はい、そうです、私は性の博物館を作ろうとしている人間で、新宿ならそういう話も聞けると思ってやってきました。ここにいる参加者(この日は研究者、学生がメインでした)もそういう目的で来ていますと説明すると、「現代のことは分かりませんけど」と言いながら、縄文時代をすっ飛ばして江戸時代から説明を始めてくださいました。
結論としては性に関する展示らしい展示はなかったのですが、このガイドさんの口頭での説明のおかげで、とても充実した時間となるのです。
■性を省いた展示から性を読み解く
「新しい宿」と書く新宿は、新しくできた宿場町という理由で名づけられたそう。一通り江戸幕府や中屋敷の話を聞いたのち、ガイドさんに促され、江戸時代の新宿(内藤新宿)の復元模型を眺めると、大きな通り(甲州街道)に門があるのを確認できました。
「夜の間この門は閉じられており、町の外に出ることはありません。宿ではやることがありません。お侍さんがたくさんいます。となると?」と言われ、あー!性風俗が発展しますねと言ったところ、「この宿には飯盛り女※がいたんです」とそこから展示には書かれていない説明がスタート。
※宿場でご飯をよそう仕事をする女性。暗黙のセックスワーカー。
展示されている絵や地図などをもとに、他人の妻を寝取った男の言い伝え(歌舞伎になっているそうなのですが名前を失念)や、望まない妊娠によって生まれ、殺された赤ちゃんが祀られたお寺(常円寺)の存在、ガイドさんが幼いころに見た着物を着た妖艶な男性の話など、書かれていることに書かれていないことが織り交ぜられながらガイドさんの話は進みました。
私は新宿の歴史を知らなかったため知らないことだらけでしたが、ガイドさんに加えてSEEXの参加者(研究者や新宿の住民)による説明が入り、それぞれが新しい発見をする見学会となりました。とてもぜいたくな時間でした・・・
■博物館はモノだけを展示する場ではない
先月、新潟で開催された全日本博物館学会に参加し、ようやっと博物館関係者とのつながりを持てたのですが、そこで出会った方に「博物館は物を展示するだけではない」と言われました。無形文化遺産のように、モノではないものの収集、展示というものについても考えるというのが国際的な博物館情勢の傾向だと。それは例えば原爆被害者の語りや、失われつつある舞踊であると。セックスミュージアムはそういうものも考えていくべきだと。
正直、そこまで今は手を広げられないとそのときは思いました。わかるけれど、モノも何があるのか、どこにあるのか、誰が持っているのか、まだ調べている段階だし、そのようなことは研究者の方でやってほしいと思ったのです。
今回のボランティアガイドさんを通じて見えてきた新宿というのは生き生きとしたもので、モノであった展示物にガイドさんが命を与えたようでした。博物館というモノが主役の劇場に、語り手が登場した感覚です。展示と語り手、両者があることで生まれるものの大きさを知った今、この先取り組みたいこととしてモノではないものの情報収集も入れたいと思ったのでした。
性を探求する場 SEEX 10
セックスミュージアム設立準備委員会主催、8月の性を探求する場SEEXは、カストリ書房見学です。
カストリ書房は遊廓・赤線・歓楽街といった遊里史に関する文献資料を専門に販売する書店です。
それまで幻とされてきた『全国女性街ガイド』の発掘・復刻や、新刊として全国の旧遊廓・赤線地帯の街景と室内を撮影した写真集『遊廓 紅燈の街区』を個人制作されるなど、取材から販売までを手掛けていらっしゃいます。
「…私が好んで止まない「遊廓・赤線」というテーマに対して、私ができ得る(かもしれない)最大の貢献として、調査にとって有用となる文献の発掘と復刻をすることにしました。個人単位では到底さばききれない調査対象数があり、研究者でもなく研究組織に属さない自分では組織化も難しい。ならば、自分が有用な文献を復刻し、それを届ける。文献を手に入れた方達が、これまで以上の調査が可能になることを期待しました。(なによりもこれまで以上に「楽しい調査」となることを期待しています)」(カストリ書房公式サイトより引用)
セックスミュージアム設立準備員会は現在、SEEXという機会を通じて日本にある性に関する資料展示の現状を調査していますが、資料保存の大変さを分かっているだけにこの文章を読むだけで胸が詰まります…尊い…(代表個人の見解です)。
吉原遊郭をめぐるガイドツアーやギャラリー運営もされているカストリ書房さんそのものについて、資料室見学を中心にいろいろお話を伺えたらと思います。
参加希望者はFacebookで参加表明をするか、個別にご連絡ください。
日時: 8月31日(土) 13:00-15:00(時間は変更の可能性があります)
集合場所: 参加希望者に個別に提示
参加費: 追って記載します
定員:9名(定員になり次第募集終了)
facebookイベントページ
https://www.facebook.com/events/337540400493955/
また、今回はSEEXとは別でカストリ書房さんのガイドツアーについても参加希望者を募ります。
こちらはツアー参加費のみです。SEEXが定員になってもこちらは参加可能です。
8/27までにご連絡よろしくお願いします。